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維持、継続の助動詞(てる、とる、てへん、とれへん)


「てる」は、「ている」が転訛したもの。
「とる」は、「ておる」が転訛したもの。
いずれも、動詞について、動作の継続、完了、習慣等を表します。

何してんのん? 今、ご飯食べてる。・・・・現在の動作が継続している。
あの人、もう来てるでぇ・・・・・・・・・・過去の動作が完了している事実が継続している。
昨日ご飯食べた? 食べてへん。・・・・・・過去の動作が生じなかったという事実が継続している。
この頃、どんなもん、食べてんのん?・・・・動作が習慣となっている。

「てへん」は、「てる」の否定。「とれへん(とらへん)」は「とる」の否定。

「てる」「てへん」は、普通の言い方で、「とる」「とれへん(とらへん)」は、やや野卑(もしくは男性的)な言い方です。

(1)「てる」、「とる」の活用形

未然
連用
終止
連体
仮定
命令
接続
て・ない
で・ない
て・た
で・た
てる
でる
てる・とき
でる・とき
てれ・ば
でれ・ば
  動詞の連用形につく
  とっ・た
どっ・た
とる
どる
とる・とき
どる・とき
とれ・ば
どれ・ば
とれ
どれ
動詞の連用形につく

「の」「のん」「ねん」「で」などが後につくときには、「てん・ねん」「とん・で」のように、撥音便します。

マ行、ナ行で活用する動詞につく場合には、「でる」「どる」となります。



(3)「てる」「とる」が動詞につく場合のアクセント

平板型アクセントの動詞

「てる」は平板[●●]、「とる」は頭高[●○]のアクセントです。

活用形
2音節
[●●]
3音節
[●●●]
4音節以上
[●●●●]
五段活用語 [●●・●●]言う・てる
[●●・●○]言う・とる
[●●●・●●]祈っ・てる
[●●●・●○]祈っ・とる
[●●●●・●●]輝い・てる
[●●●●・●○]輝い・とる
上一段活用語 [●・●●]居(い)・てる
[●・●○]居(い)・とる
[●●・●●]出来・てる
[●●・●○]出来・とる
[●●●・●●]滅び・てる
[●●●・●○]滅び・とる
下一段活用語 [●・●●]得・てる
[●・●○]得・とる
[●●・●●]越え・てる
[●●・●○]越え・とる
[●●●・●●]与え・てる
[●●●・●○]与え・とる
カ行変格活用語
サ行変格活用語 [●・●●]し・てる
[●・●○]し・とる



尻上がり型アクセントの動詞

「てる」がつくと、アクセントは最後まで待機します。
「とる」がつくと、動詞部はアクセントは待機し、「と」が高くなります。

但し、上下一段とカ変の動詞部が一音節の語は、平板動詞と同様のアクセントになります。

活用形
2音節
[○●]
3音節
[○○●]
4音節以上
[○○○●]
五段活用語 [○○・○●]読ん・でる
[○○・●○]読ん・どる
[○○○・○●]歩い・てる
[○○○・●○]歩い・とる
[○○○○・○●]もたらし・てる
[○○○○・●○]もたらし・とる
上一段活用語 [●・●●]見・てる
[●・●○]見・とる
[○○・○●]悔い・てる
[○○・●○]悔い・とる
[○○○・○●]用い・てる
[○○○・●○]用い・とる
下一段活用語 [●・●●]出・てる
[●・●○]出・とる
[○○・○●]見え・てる
[○○・●○]見え・とる
[○○○・●○]答え・てる
[○○○・●○]答え・とる
カ行変格活用語 [●・●●]来(き)・てる
[●・●○]来(き)・とる
サ行変格活用語 [○○○・○●]命じ・てる
[○○○・●○]命じ・とる



例外:頭高型アクセントの動詞

「おる」に「てる」「とる」はつきません。

活用形
2音節
[●○]
 
五段活用語 [●●・●●]居(お)っ・てる
[●●・●○]おっ・とる
・・というような言い方はない!



(3)「てへん」「とれへん(とらへん)」が動詞につく場合のアクセント

平板型アクセントの動詞

動詞部は平板で、「てへん[●○○]」「とれへん(とらへん)[●○○○]」がつきます。

活用形
2音節
[●●]
3音節
[●●●]
4音節以上
[●●●●]
五段活用語 [●●・●○○]言う・てへん
[●●・●○○○]言う・とれへん
[●●●・●○○]祈っ・てへん
[●●●・●○○○]祈っ・とれへん
[●●●●・●○○]輝い・てへん
[●●●●・●○○○]輝い・とれへん
上一段活用語 [●・●○○]居(い)・てへん
[●・●○○○]居(い)・とれへん
[●●・●○○]出来・てへん
[●●・●○○○]出来・とれへん
[●●●・●○○]滅び・てへん
[●●●・●○○○]滅び・とれへん
下一段活用語 [●・●○○]得・てへん
[●・●○○○]得・とれへん
[●●・●○○]越え・てへん
[●●・●○○○]越え・とれへん
[●●●・●○○]与え・てへん
[●●●・●○○○]与え・とれへん
カ行変格活用語
サ行変格活用語 [●・●○○]し・てへん
[●・●○○○]し・とれへん



尻上がり型アクセントの動詞

「てへん」「とれへん(とらへん)」がつくと、動詞部はアクセントは待機し、「て」「と」が高くなります。

但し、上下一段とカ変の動詞部が一音節の語は、平板動詞と同様のアクセントになります。

活用形
2音節
[○●]
3音節
[○○●]
4音節以上
[○○○●]
五段活用語 [○○・●○○]会(お)う・てへん
[○○・●○○○]会(お)う・とれへん
[○○○・●○○]歩い・てへん
[○○○・●○○○]歩い・とれへん
[○○○○・●○○]もたらし・てへん
[○○○○・●○○○]もたらし・とれへん
上一段活用語 [●・●○○]見・てへん
[●・●○○○]見・とれへん
[○○・●○○]悔い・てへん
[○○・●○○○]悔い・とれへん
[○○○・●○○]用い・てる
[○○○・●○○○]用い・とれへん
下一段活用語 [●・●○○]出・てへん
[●・●○○○]出・とれへん
[○○・●○○]見え・てへん
[○○・●○○○]見え・とれへん
[○○○・●○○]答え・てへん
[○○○・●○○○]答え・とれへん
カ行変格活用語 [●・●○○]来(き)・てへん
[●・●○○○]来(き)・とれへん
サ行変格活用語 [○○○・●○○]命じ・てへん
[○○○・●○○○]命じ・とれへん



例外:頭高型アクセントの動詞

「おる」に「てへん」「とれへん」もつきません。

活用形
2音節
[●○]
 
五段活用語 [●●・●○○]居(お)っ・てへん
[●●・●○○○]おっ・とれへん
・・というような言い方はない!