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過去、完了の助動詞(た、だ、なんだ、んかった、へんかった)


過去、完了を表すには、共通語と同じ「〜た、〜だ」を使います。

過去、完了の否定を表すには、共通語では、否定の助動詞「ない」に「た」をつけて「〜なかった」と言います。

しかし、大阪弁では2つの言い方があります。現在ではほとんど@は用いられなくなりました。

@「ん」に「た」をつけた「〜なんだ」と言う形
A「〜ん」又は「〜へん」に形容詞の連用形変化語尾「かっ」を伴った「〜んかった」「〜へんかった」と言う形

(1)「た、だ」、「なんだ」の活用形

未然
連用
終止
連体
仮定
命令
接続
たろ・う
だろ・う
 
た・とき
だ・とき
たら・ば
だら・ば
  「だ」は、動詞が撥音便(「ん」)となる場合に使われます。
    なんだ なんだ・とき なんだら・ば    
んかったろ・う   んかった んかった・とき んかったら・ば    
へんかったろ・う   へんかった へんかった・とき へんかったら・ば    

推量の「う」がつく場合、「たろ・う」「だろ・う」という形よりも、助動詞「や」を伴って「た・やろ・う」「だ・やろ・う」が使われます。これは共通語で「ただろう」が使われるのと同じです。
「なんだ」も同様で、「なんだ・やろ・う」となります。



(2)「た」のアクセント

平板型アクセントの動詞

基本的には、「た」をつけて2音節になる場合は、頭が高くなります。
「た」をつけて3音節以上になる場合は、始めは高く、最後の2音節が低くなります。
促音便(っ)となる場合は、「っ」は前のアクセントに引きずられます。
五段活用語では、一部例外が生じます。

活用形
2音節
[●●]
3音節
[●●●]
4音節以上
[●●●●]
五段活用語 [●○・○]言う・た、巻いた、死んだ
[●●・○]行った、押した
[●●○・○]思う・た、動いた
[●○○・○]直した、話した、祈った
[●●●○・○]行う・た、輝い・た
[●●●●・○]争っ・た、異なった
上一段活用語 [●・○]居(い)・た [●○・○]出来・た [●●○・○]滅び・た
下一段活用語 [●・○]得・た [●○・○]越え・た [●●○・○]与え・た
カ行変格活用語
サ行変格活用語 [●・○]し・た



尻上がり型アクセントの動詞

基本的には、「た」をつけて2音節になる場合は、頭が高くなります。
「た」をつけて3音節以上になる場合は、始めは高く、最後の2音節が低くなります。
但し、五段活用語で「た」をつけて3音節になる場合は、最後の音節が高くなり、音節内で下がります。
促音便(っ)となる場合は、「っ」は前のアクセントに引きずられます。

活用形
2音節
[○●]
3音節
[○○●]
4音節以上
[○○○●]
五段活用語 [○○・▼]会(お)う・た [○●○・○]歩い・た
[○●●・○]作った
[○○●○・○]もたらし・た
上一段活用語 [●・○]見・た [○●・○]悔い・た [○●○・○]用い・た
下一段活用語 [●・○]出・た [○●・○]見え・た [○●○・○]答え・た
カ行変格活用語 [●・○]来(き)・た
サ行変格活用語 [○●○・○]命じ・た
[○○●・○]察し・た



例外:頭高型アクセントの動詞

本来は、[●○・○]だが、促音便(っ)なので[●●・○]となります。

活用形
2音節
[●○]
五段活用語 [●●・○]居(お)っ・た





(3)「なんだ」のアクセント

平板型アクセントの動詞・・・動詞部は高く、「なんだ」は低くなります。

活用形
2音節
[●●]
3音節
[●●●]
4音節以上
[●●●●]
五段活用語 [●●・○○○]言わ・なんだ [●●●・○○○]思わ・なんだ [●●●●・○○○]行わ・なんだ
上一段活用語 [●・○○○]居(い)・なんだ [●●・○○○]出来・なんだ [●●●・○○○]滅び・なんだ
下一段活用語 [●・○○○]得・なんだ [●●・○○○]越え・なんだ [●●●・○○○]与え・なんだ
カ行変格活用語
サ行変格活用語 [●・○○○]せ・なんだ



尻上がり型アクセントの動詞・・・動詞部は尻上がり(1音節の場合は高く)、「なんだ」は低くなります。

活用形
2音節
[○●]
3音節
[○○●]
4音節以上
[○○○●]
五段活用語 [○●・○○○]会わ・なんだ [○○●・○○○]歩か・なんだ [○○○●・○○○]もたらさ・なんだ
上一段活用語 [●・○○○]見・なんだ [○●・○○○]悔い・なんだ [○○●・○○○]用い・なんだ
下一段活用語 [●・○○○]出・なんだ [○●・○○○]見え・なんだ [○○●・○○○]答え・なんだ
カ行変格活用語 [●・○○○]来(こ)・なんだ
サ行変格活用語 [○○●・○○○]命ぜ・なんだ



例外:頭高型アクセントの動詞・・・動詞部は高く、「なんだ」は低くなります。

活用形
2音節
[●○]
五段活用語 [●●・○○○]居(お)ら・なんだ




(4)「んかった」、「へんかった」の活用形

どちらの場合も、否定の助動詞「ん」「へん」がつく場合と同じアクセントとなり、それに「かった[○○○]」が低く発音されてつきます。

言わんかった[●●・●○○○]
会わんかった[○○・●○○○]
おらんかった[●●・●○○○]
言えへんかった/言わへんかった[●○・○○○○○]
会えへんかった/会わへんかった[○●・○○○○○]
おれへんかった/おらへんかった[●○・○○○○○]

参照:否定の助動詞(ない、ん、へん)のアクセント